放浪したいという思い
他人の芝生は青く見えるという言葉があります。だれでも、今自分がいる場所がつまらなくて、他の場所の方がよく見えてしまったりすることがあります。
私の放浪したいという衝動は、もしかしたら、そういうことの積み重ねなのかもしれません。
ひとところにとどまりたくないという思いは、昔からありました。引っ越しの多い人生で、そのたびに自分の友人や近所の人たちと別れを繰り返してきました。
でも、別れてしまったものの、自分がそこに戻ればまたその人たちに会えるわけで、何も今生の別れというわけではありません。
旅に出るとそれこそ、毎日のように、誰かと出会って別れていきます。袖触れ合う仲も…という話もありますが、旅先で出会った人とは本当に一期一会です。
それで、さみしいと思わないといったらうそになりますが、でも、旅に出たいという気持ちには変わりがありません。
一度きりの人生、自分がたどり着けるところまで行ってみたい、じっとしているだけでは出会えない人と出会いたい、普通に暮らしているだけでは経験できないことを体験したいという欲望が湧き上がってくるのです。
船の汽笛、飛行機の轟音、電車ホームのアナウンス…、こういう音を聞くと「私もどこかへ行かなくては」と焦りを感じるのは私だけではないと思うのです。